健康 病気 犬の耳の病気 甘く見ると重大サインを見落としがち

多くの犬がかかってしまう耳の病気「外耳炎」。高齢になるまで適切な治療をせずに放置すると、慢性化して悪化するケースも。外耳炎が引き起こす病気、さらにほかの耳周りの病気について、犬の耳鼻科に詳しい獣医師の青木忍先生が解説します。

「外耳炎は、耳の穴から鼓膜までの外耳道に起こる炎症です。悪化すると、鼓膜から先に炎症が進み、中耳炎を引き起こすことも」

中耳炎は外耳炎と症状が似ているため、中耳炎まで進んでいるのかどうかの判別は難しい。ただ、外耳炎も中耳炎も耳から分泌液が出る「耳ダレ」が起こることがあるが、外耳炎から中耳炎に進行すると耳ダレの量が多くなることがある。「朝起きて耳の周りがベトベトになるほどの耳ダレがあった場合、中耳炎にまで進行しているかもしれません」(青木先生)

あとは、痛がり方。外耳炎の時に比べて強く痛がっていないか。

「中耳炎の場合、大きな口を開けようとすると痛いので、あくびを途中でやめたりすることも。また、硬いドライフードをかむと痛いので嫌がり、柔らかいものを好んだり、痛くない側でばかりかむようにしたり。それらもサインになります」

さらに炎症が進むと、内耳炎に。内耳には三半規管があるため、姿勢が傾いてしまい、オス犬の場合はおしっこをしようと片足をあげた途端にフラフラする、といった症状が出たりする。眼球が揺れる「眼球振盪(しんとう)」が起こることも。「内耳は脳に近い。確定診断にはCTやMRIといった画像診断が必要になります」(青木先生)

一般的に、外耳炎から中耳炎に、中耳炎から内耳炎に……と進行していくことが多いので、外耳炎の段階で適切な治療をし、早めに食い止めることが重要だ。

老犬は耳の中に腫瘍ができるリスクも

姿勢が傾く、眼球が揺れる、まっすぐ歩けない……といった、内耳炎によく似た症状が出る疾患をまとめて「前庭症候群」という。この中には、脳に重大な異常がある疾患も含まれる。

「12歳ぐらいの高齢になると、ある日突然、症状が出る『老年性の特発性前庭症候群』という病気があります。脳の病気などを疑ってCTやMRIを撮っても何も映らない。原因がわからないため『特発性』と呼ばれるのです」と青木先生。

この疾患の場合には、ステロイドなどが処方され、大抵は1~2週間もすると症状が治まるという。

しかし、高齢で発症した前庭症候群の中には脳腫瘍など重大な疾患も含まれる。「症状が出たら、軽く見ないで動物病院へ行くようにしましょう」(青木先生)

年齢とともに、耳の中に腫瘍ができるリスクも高まる。腫瘍の症状は外耳炎と大差ないことも多く、耳道の奥に発生した場合には発見が難しい。すべての耳の病気もそうだが、病院で定期的に耳の中を見てもらい、病的な変化がないかチェックすることが大切だ。

耳が遠くなった老犬は車の音に気づけない

もう一つ、老犬によく見られるのが「老齢性の難聴」。いわゆる「耳が遠くなる」症状だ。

「8歳ぐらいから徐々に聴力は落ちてくるようです」と青木先生。呼んでも反応しないなどで、飼い主側も「耳が遠くなった?」と感じることも。視覚や嗅覚などほかの感覚でカバーできるので大きな支障にはならないことが多いが、「お散歩などで外を歩いているとき、車が近づく音などに気づけなくなることも。飼い主さんが一緒に歩き、気をつけてあげて」

また、寝ているときなどに突然近づくと、犬がビックリしてしまうことも。気の小さい犬などは攻撃的になってしまうことがあるかもしれない。

青木先生はこうアドバイスする。

「足音を大きくして近づく、声をかけながら少しずつ近づくなど、感づかせるようにしてあげる工夫を。また、若いうちから声だけでなく、身ぶり手ぶりをまじえたコミュニケーションを習慣にしておくと、難聴になっても良好な関係を続ける助けになるかもしれません」

青木先生によれば、「犬は生活にもコミュニケーションにも嗅覚が重要で、聴覚の多少の衰えは人間ほど大きな問題にはならないでしょう」とのこと。とはいえ、嗅覚も視覚も年齢とともに衰えるのは犬も同じ。日々の適切なお手入れ、様子や体調のチェック、そして病院での定期的な診察を心がけ、愛犬のQOLを維持してあげたい。

Sippo     2018/06/10  引用