殺処分から一転 警察犬挑戦へ訓練 岡山のシバイヌ「愛ちゃん」

迷子犬として動物保護施設に収容された。人を恐れ、かみついた。飼育は難しいと判断され、殺処分が決まった…。そんな運命をたどってきたシバイヌが、岡山県警の嘱託警察犬になるために訓練を続けている。岡山市の動物愛護団体に引き取られた「愛ちゃん」(推定3歳、雌)。人を信頼することを学び、新たな道を歩み始めた愛ちゃんは25日、総社市である警察犬の審査会に初挑戦する。

「伏せ」「止まれ」「来い」。岡山市南区川張の公園で訓練士の赤木美穂さん(53)が「服従」の指示を出す。赤木さんの目を見て、懸命に動く愛ちゃん。1年の訓練生活で信頼関係が生まれた。

2016年11月、岡山県吉備中央町で迷子になっていた愛ちゃんは、岡山県動物愛護センター(岡山市)に収容された。人を怖がり、かみつくため、新たな飼い主に譲渡するのは無理と判断され、殺処分が決まった。

死を迎える1週間前。動物愛護のNPO法人「しあわせの種たち」(同市)の濱田一江理事長(61)が手を差し伸べた。4年前からセンターに通い、殺処分予定の犬たちと向き合い、命をつなぐ活動を続けている。

初めはおびえ、牙をむくばかりだった。それでも濱田理事長は毎日、寄り添い続けた。5日目には散歩に連れ出せるまでになり、センターから「譲渡」の許可が得られた。

 警察犬を目指すことになったのは支援者の一人、会社経営今里明子さん(52)=東京=の提案だ。「愛情と訓練を受ければ、人に役立つ存在になる可能性を示したい」との思いからだった。

昨年1月から訓練をスタート。独立心が強いシバイヌは警察犬には不向きとされる。加えて愛ちゃんのような保護犬は、トラウマ(心的外傷)から人との信頼関係を築くのが難しく、ハードルはより高いという。

犬の気持ちに寄り添ったトレーニングを心掛ける訓練士の赤木さんは、まずは自由に行動させた。「お座り」を覚えるまでに1カ月。地道な訓練を続け、一つ一つ動作を覚えていった。「警戒を解き、かみついたりする問題行動も収まった。ただ、好奇心が旺盛なので、虫が飛んだり、風が吹いたりしたら集中力が途切れてしまわないか心配」と赤木さんはほほ笑む。今では地域の人気者。訓練中の公園では子どもらから「頑張れ」「かわいい」と声を掛けられる。

25日は基本動作の「服従」と、特定の臭気を探す「地域捜索」に挑む。日本警察犬協会によると、保護犬出身の嘱託警察犬は茨城県警のトイプードルを把握しているだけという。濱田理事長は「結果にかかわらず、諦めなければ未来への道が開けることを愛ちゃんが教えてくれている」と見守っている。

嘱託警察犬 民間で飼育管理し、警察の要請で行方不明者の捜索などに当たる。警察庁などによると、全国の都道府県警に登録されている嘱託警察犬は1214匹(2017年)で、岡山県警は35匹。警察犬に向く犬種として「シェパード」「ドーベルマン」「ゴールデンレトリバー」など7犬種が指定されているが、近年は小型犬が登録されるケースもみられる。